Concept NEW! of SPACE:KANEKO Tomoki

ロゴ.jpg金子 朋樹 http://kaneko-tomoki.com/

 圧倒的に情報が開かれている昨今、科学のもとに生まれた人工物は、よりマッスを伴って内燃機関を向上し、時間と空間を拡張していく。それらの産物によって私は短スパンで静岡と山形の反復運動が可能となり、共に山岳信仰の地にある不変の自然観に想いを馳せながら双方の地域で日常生活を送ることが出来ている。しかしながら、反復運動による俯瞰から私の視界に浮かび上がってくるものは、社会や文化の中に潜んでいる捻れのようなものだ。

 静岡と山形の往来時、峠のある山々に空けられた幾つものトンネルをくぐる。その時、古より多くの人々がやっとの思いで峠越えしたことをしばしば想像する。現代の文明によって我々の空間感覚は限りなくフラットなものになったように思うが、かつてはそうでは無く、ひだ連なるレリーフだったはずだ。民俗学者の野本寛一は著書の中で「峠は晴れの場であった」と記し、山を越えることが苦労ゆえに獲得出来た特別なショットだったことを示している。だからこそ現代に生きる私は“峠越え”という所作が無くなったことで時間を得た一方、大事な何かを見落としているように思うことがある。

 晴れ(ハレ)と褻(ケ)、あるいは両者の重なりから否応無く滲み出ている捻れの中に、異国の文化から言葉も信仰も着衣でさえも実生活の中に吸収し、脈々と受け継がれてきたものと等価に扱い、また統合してきた自国の姿を垣間見ることが出来る。私は様々なあいだを揺らぎながら、現代社会の中に存在する捻れを掬い、表したいと思う。なぜなら、それらも私たちを取り巻く世界と今の在りようであり、その中にこそ現代に生きる私たちへの問い掛けがあるような気がしてならないからだ。

2016年8月  金子 朋樹

アクシス・ムンディ–等価・統合–

金子朋樹展「アクシス・ムンディ–等価・統合– 」
2015年10月26日(月)-10月31日(土)
11:00-19:00(最終日17:00)

会場|アートスペース羅針盤 
〒104-0031東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F  TEL03-3538-0160
後援|サンルイ皮ふ科 高田任康
協賛|ITALIAN Bar Ristorante SCRIGNO 高橋修司
協力|アートスペース羅針盤・相原木材株式会社

◇ギャラリートーク
2015年10月30日(金) 16:00~17:30
ゲスト 立島惠(佐藤美術館 学芸部長)



 私はこれまで、社会や文化の中に潜み、あたかも等価・統合されてきた"捻れ"を掬い上げ、虚膜の如く水面に見立てた絵の中に落とし込むことを試みてきた。主に出身地からの光景を切り取ってきた理由は、自身のルーツを俯瞰していくうちに、生活に混在する日常(ケ)と非日常(ハレ)の狭間にそれらを見出してきたからだ。否応無く滲み出ていたこれらの光景は、古くより異国の文化から言葉も信仰も着衣でさえも実社会の中に吸収し、脈々と受け継がれてきたものと等価させてきた自国の姿が折り重なるようにも思う。ヘリコプターや航空機を自然生命と重ね合わせてきた訳はここにある。

 場所性を重視する自己にとって、静岡と山形の反復運動はさらに重要な意味を持つようになった。一見引き裂かれた様相を呈しているが、共に山岳信仰の地にある不変の自然観に想いを馳せざるを得ない。反面、圧倒的に情報が開かれている昨今、果てし無い科学の増幅と人類の向かう先に私の興味は尽きない。科学のもとに生まれた人工物はよりマッスを伴って内燃機関を向上し、時間と空間を拡張していく。重力に抵抗し、時として危険を誘発する物体さえも存在する。

 そして自然生命もまた偉大な光学装置を持つダイナミズムだ。これらの有機体と無機体の狭間で、私たちは自然生命といかに関わっていくのか?その狭間をいかにして生きていくのか? 「あいだ」を揺らぐこれらの問いと共に、私は「現在」の在りようを刻みたい。反復運動から俯瞰することで浮かび上がってくる不変と可変、陰と陽、正と負、そしてハレとケ…。これらの等価・統合された世界を焼き付けることは可能だろうか。

— アクシス・ムンディ。世界軸とは人類に刻まれたシンボリズムの概念だ。それはまた私にとって全てを受け入れる器であり、世界の起源である。

2015年10月  金子 朋樹

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芍薬鳶図.jpg朝顔群図.jpg

菖蒲蛇図.jpg睡蓮鯉図.jpg